日産が本社ビル売却で現在はどうなる?巨額赤字の理由と再建計画の行方、九州工場の好調は希望か

2025年11月7日、経営再建の道を歩む日産自動車から衝撃的な発表がありました。

2025年9月の中間連結決算で、最終利益が2000億円を超える大幅な赤字を計上したというのです。

さらに、リストラ策の一環として、横浜にあるあの日産本社ビルを売却することも明らかにされました。

「日産、大丈夫か?」「なぜこんなに赤字なの?」「本社を売って今後はどうなるの?」

そんな不安や疑問の声が聞こえてきそうです。

この記事では、日産が直面している巨額赤字の深刻な理由、決定された本社ビル売却の相手や今後の行方、そして再建計画の現在の進捗について、発表された情報を基に詳しく解説していきます。

一方で、九州工場が好調で24時間操業になるという明るい話題もあり、日産の複雑な現状を整理します。

日産を襲う深刻な事態。2000億円超の大幅赤字とその理由は?

まず、今回発表された決算の内容から見ていきましょう。

まさに「深刻」という言葉がふさわしい状況です。

5年ぶりの中間赤字、その具体的な数字

日産自動車が2025年11月6日に発表した2025年9月中間連結決算。

その内容は、最終利益が2219億円の赤字(前年同期は192億円の黒字)というものでした。

中間期として赤字になるのは、実に5年ぶりのことです。

本業のもうけを示す営業利益も276億円の赤字(前年同期は329億円の黒字)となり、売上高も前年同期比で6.8%減の5兆5786億円と、厳しい数字が並びました。

2025年3月期にはすでに6708億円という巨額の最終赤字を記録しており、苦しい経営が続いていることが分かります。

経営を圧迫する「三重苦」とは何か?

なぜ、これほどの赤字になってしまったのでしょうか。

報道によれば、日産は現在「三重苦」に陥っていると指摘されています。

  • 世界的な販売不振
  • 米国の高関税政策
  • 半導体不足

これら3つの大きな課題が同時に日産を襲っているのです。

特に世界販売台数は、前年同期比で7.3%減の148万台に落ち込みました。

主要市場である中国では17%減の約28万台、日本国内でも16%減の約19万台と、二桁を超える大幅な減少となっており、販売の低迷が赤字に直結しています。

米国関税と半導体不足の深刻な影響

「三重苦」の中でも、特に経営の足を引っ張っているのが米国の関税と半導体不足です。

米国の関税コストが与える打撃は非常に大きく、2026年3月期には営業利益を2750億円も押し下げる要因になると試算されています。

イバン・エスピノーサ社長は「米関税の影響を除けば、損益が均衡する」と説明していますが、この関税措置は今後も続くと見られており、極めて重い足かせです。

さらに、新たな懸念材料として「半導体不足」が追い打ちをかけています。

自動車生産に不可欠な半導体が、サプライチェーンの混乱で手に入りにくくなっているのです。

日産本社ビル売却が決定。相手は誰で場所はどこ?

今回の決算発表と同時に、もう一つ大きなニュースが飛び込んできました。

横浜市西区にある日産の本社ビルを売却するという決定です。

なぜ今、本社ビルを売却するのか?その目的

日産は2025年3月期の大赤字を受け、世界で従業員2万人と7工場の削減を含む大規模なリストラ策を進めています。

今回の本社ビル売却も、このリストラ策の一環です。

最大の目的は、ビル売却によって手元資金を確保し、財務基盤を強化することにあります。

「資産の最適化を進め、日産が勝ち残る体制を整える」とエスピノーサ社長は語っており、まさに「聖域なき」改革を進める覚悟がうかがえます。

売却相手は台湾系ミンスグループと米国ファンド関与のSPC

気になる売却額と相手先についても公表されました。

売却額は970億円です。

売却先は、台湾系の自動車部品大手「ミンスグループ」や、米国の投資ファンド「KKR」などが関与する特別目的会社(SPC)とのことです。

売却は2025年12月を予定しており、これにより日産は2026年3月期に739億円の特別利益を計上する見込みです。

横浜のビルは今後どうなる?(賃貸で継続使用)

「本社を売却したら、日産の拠点はどこになるの?」と心配になるかもしれません。

ご安心ください。日産はビルを売却した後も、賃貸契約を結んで現在の本社の建物をそのまま使用し続けるとしています。

つまり、働く場所や「日産グローバル本社ギャラリー」などがすぐになくなるわけではなく、所有権だけが移る形となります。

再建計画「Re日産」の現在は?進捗と今後の見通し

苦境が続く日産ですが、もちろん手をこまねいているわけではありません。

2025年5月に発表された経営再建策「Re日産」の進捗はどうなっているのでしょうか。

コスト削減の進捗状況

「Re日産」の大きな柱はコスト削減です。

2026年度までに合計5000億円の削減目標を掲げていますが、これは容易な道ではありません。

現時点(2025年11月)で、材料費の抑制などで2000億円分のメドが立ったと発表されています。

また、工場の閉鎖や今回のような本社売却などで、固定費も2025年度末までに1500億円以上削減する道筋がついているとのことです。

エスピノーサ社長は「(経営再建策は)着実に前進している」と自信を見せています。

北米市場の黒字化と新型「ルークス」の好調

厳しい状況の中ですが、わずかながら明るい兆しもあります。

日産の売上高の5割超を占める北米市場が、25億円の黒字に転じたのです。

エスピノーサ社長は「集客力は徐々に改善している。ブランドに対する信頼も戻っている」と手応えを感じているようです。

また、国内市場では、約3年ぶりの新型車となった軽自動車「ルークス」が9月中旬の発表からわずか6週間で1万5000台を受注するなど、好調な滑り出しを見せています。

中国でも年内にプラグインハイブリッド車(PHV)など3種類の新型車を投入予定で、後半の巻き返しが期待されます。

厳しい26年3月期の業績見通し

しかし、こうした好材料をもってしても、先行きは依然として不透明です。

日産は、2026年3月期(通期)の営業赤字が過去最大の2750億円になる見込みだと発表しています。

これは前述の「米国の高関税」が重くのしかかるためです。

再建策は進んでいるものの、外部環境の荒波が日産の回復を阻んでいる構図です。

新たな懸念「半導体不足」の理由は?どこのメーカーの影響?

日産の再建に「待った」をかけているのが、新たな懸念材料である半導体不足です。

中国系メーカー「ネクスペリア」の供給問題

今回の半導体不足は、特定のメーカーが原因とされています。

それは、オランダに本社を置いていますが、中国資本の半導体メーカーである「ネクスペリア」です。

このネクスペリアに対する輸出規制が発動されたことを受け、サプライチェーン(供給網)が混乱しているのです。

追浜工場と九州工場での減産が開始

この影響はすでに出始めています。

日産は来週から、追浜工場(神奈川県横須賀市)と九州工場(福岡県苅田町)で、数百台規模の減産を余儀なくされると発表しました。

もしこの影響がさらに拡大すれば、ようやく見え始めた販売回復の兆しを妨げることになりかねません。

ジェレミー・パパン最高財務責任者(CFO)も「状況は流動的で、極めて密に(経緯を)見ながら経営する」と強い懸念を示しています。

明暗。九州工場はなぜ好調?24時間操業(3直化)の背景

半導体不足による減産が伝えられた九州工場(日産車体九州)ですが、実はそれとは対照的な非常に好調なニュースも発表されています。

大型SUV「パトロール」が中東で絶好調

日産車体九州では、ラダーフレーム構造を持つ大型SUV「パトロール」や、その派生車種である「アルマーダ」、「インフィニティQX80」を生産しています。

これらの車種、特に「パトロール」が、主力の中東市場などで絶好調な売れ行きを見せているのです。

需要に生産が追いつかない状況のようで、日産は日産車体九州の生産体制を、今冬にも「3直化」(24時間操業)へと移行する準備を進めていることを明らかにしました。

エスピノーサ社長も「生産体制を最大限確保する」と意気込んでいます。

「パトロール」日本市場投入はいつ?

中東で大人気の「パトロール」ですが、日本では現在正規販売されていません。

しかし、今回の発表で、2027年度の前半には日本市場への投入も予定していることが明らかになりました。

日産の大型SUVファンにとっては、待望のニュースと言えそうです。

追浜工場は2027年度末で生産終了。その後はどうなる?

九州工場が好調な一方で、対照的な動きとなっているのが追浜工場です。

跡地活用は「完成車生産以外」も視野

追浜工場は、2027年度末をもって車両の生産を終えることが予定されています。

注目されるのは、その広大な「跡地」の活用方法です。

これについてエスピノーサ社長は、「自動車工場の運営は(外部環境変化が激しい)今の時代では難しい」と述べ、必ずしも完成車の生産にこだわらない考えを示しました。

完成車生産以外の選択肢も含めて、検討が進められています。

従業員の雇用維持を最優先に検討

工場が生産を終えると聞くと、そこで働く従業員の方々の雇用が心配されます。

この点についてエスピノーサ社長は、「まずは従業員を中心に考える」と明言。

「長期的、持続的に雇用を維持できる選択肢」を検討しているとしており、雇用の維持を最優先に進める方針です。

イバン・エスピノーサ社長は再建へ「勝ち残る体制整える」と強調

今回の一連の発表を行った、日産自動車のイバン・エスピノーサ社長。

2025年9月中間決算の記者会見では、厳しい現状認識を示しつつも、再建への強い意志を改めて強調しました。

「複数の課題に直面し、不安定な環境が続く中、業績回復に集中的に取り組んでいく」

「厳しい環境でも、(経営再建策は)着実に前進している。資産の最適化を進め、日産が勝ち残る体制を整える」

「将来の発展に向けた土台作りはできている」

コスト削減と並行して、「エルグランド」や「パトロール」といった新型車で攻勢をかける「セカンドギアにシフトする」とも語っており、守りから攻めへの転換も模索しています。

まとめ:日産の今後はどうなる?

今回の日産自動車の発表をまとめます。

  • 2025年9月中間決算は2219億円の巨額赤字(5年ぶり)。
  • 理由は「販売不振」「米国関税」「半導体不足」の三重苦。
  • 財務強化のため、横浜の本社ビルを970億円で売却(売却後も賃貸で使用)。
  • 半導体不足(ネクスペリア問題)で、追浜・九州工場で減産。
  • 一方で、九州工場は「パトロール」が好調なため24時間操業(3直化)へ。
  • 追浜工場は2027年度末で生産終了。跡地は車生産以外も検討。

まさに「明暗」が混在する、複雑な経営状況が明らかになりました。

巨額の赤字と本社売却というショッキングなニュースがある一方で、北米市場の回復や「ルークス」の好調、そして「パトロール」人気による九州工場の活況という希望の光も見えています。

日産の今後は、厳しいリストラ策を着実に実行しつつ、半導体不足などの外部リスクを乗り越え、魅力的な新型車でどれだけ販売を回復させられるかにかかっています。

日本の主要産業である自動車メーカーの、今後の動向から目が離せません。

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